minerva2050 午後の愉しみ

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文学

「藤沢周平」を読む(その1)

愛憎の檻 -獄医立花登手控え NHK連続ドラマで放映中 >藤沢周平さんの小説はかなり読んでいたつもりが調べてみると、まだ半分にも満たないのものでありました。(下の作品集のうち明るいブルーラインが読了) ただ年月だけはかけていますからよき読者の一人で…

書評「冷血」上・下 高村薫

合田が帰ってきた。 高村節のリズム感が戻ってくるのは事件現場に合田が到着してからである。 現場検証、捜査会議の詳細を極めるリアリティ表現はさすがの高村さん。 ただ事件はありふれた強盗殺人事件、犯人逮捕もあっけない。 あえてシンプルな舞台設定に…

高村薫を読む、「レディジョーカー」

レディ・ジョーカー〈上〉(1997/12/01)高村 薫商品詳細を見る 高村薫さんの傑作ミステリー「レディジョーカー」がテレビドラマ化され第一回をみました、秀作です。 同原作は2004年に日活で渡哲也さんらにより一度映画化されています。 なかなかの力作で…

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕やはり読みづらい翻訳

ル・カレの著作を流麗に翻訳されてきた村上博基さんの訳。 どうしちゃったんだろう、ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕はやはり読みづらい。 映画「裏切りのサーカス」の公開に合わせて大急ぎのやっつけ仕事だったんでしょうか。 多くの人…

「水滸伝」19巻 完結編 なるほどだから面白い

「水滸伝」19巻 完結編 なるほどだから面白い北方水滸伝。 講談本では梁山泊に最後まで生き残るはずの楊志が北方版では第五巻で早々に死んでしまった、どうして? その後延々と続く楊令の成長物語はなぜ? 17巻から突然登場する女真族、どうして? 多く…

「十二国記」新作は直木賞を受賞する

いわば東洋の「指輪物語」、きっと永く読み継がれる名作なので、 新作に直木賞くらいあげておかないと、将来、直木賞選考委員の人たちはきっと恥ずかしい目に合うでしょう。 いまは奇書、あすは名著 食わず嫌いという言葉があります。読書ではさしずめ嫌いな…

スクラップアンドビルド

「今日は家におると?」 この絶妙な長崎弁のセリフで物語は動き出します。 「早う死にたか」 毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、 ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。 日々の筋トレ、転職活動。 肉体も生活も再構築中の青年の心…

「家族八景」「七瀬ふたたび」「エディプスの恋人」七瀬三部作 筒井康隆

家族八景 (新潮文庫)(1975/03/03)筒井 康隆商品詳細を見る 伝説の復活から2年!大人のエンターテインメント作品 米倉涼子版『家政婦は見た!』再び! SF小説の出来具合はフィクションとリアリティの混合比によって決まります。 だいたいフィクション4対リ…

北方謙三「水滸伝」八巻

前半のクライマックス、独竜岡の攻防。 宋江、,晁蓋も先陣を切る梁山泊あげての総攻撃に読者も手に汗握る。 さらに、 「一騎打ちを所望じゃ」 林沖は百騎を後方に退け、ひとりで突っ込んでくる扈三娘を待った。2本突き出した剣の先には闘気が溢れている。 …

新宿鮫 大沢在昌

なぜか故ロバート・B・パーカーの「スペンサーシリーズ」を彷彿とさせる。 スペンサーがボストン市内を徘徊するように鮫島は新宿の街を歩く。 いずれも地図を持ち歩けば正確に小説のその場所に行き着く。 スペンサーにはスーザンという恋人がいるが鮫島には…

北方謙三「水滸伝」五巻

意外な展開である。 楊志が早々に死ぬ。 まだ宋江も梁山泊に入っていない。 「死は誰にもやってくる。晁蓋は、そう思った。 早いか遅いかの違いだけで、人はみな土に還る。 だから、嘆くことはない。 死者のために、生き残った者ができることは、なにもない…

「サマー・アポカリプス」笠井潔 異端カタリ派の呪いか?

「昨日ジゼールは、黄昏時にモンセギュールの城跡を散歩していた。 観光客の足も途絶えた人気のない石の廃墟に一人いると、 まるで痺れるような畏怖の感覚の海に沈んでいきそうになる。」 南フランスアリエージュ県モンセギュール村、スペイン国境に近い盆地…

「バイバイ、エンジェル」(笠井潔)舞台はパリ、矢吹カケルくんが登場

舞台はパリ。 一度でもその街角をそぞろ歩いた人には懐かしいあのパリが舞台のミステリー小説です。 森有正さんが、あるいは辻邦生さんが語るパリもありますが、 笠井潔さんは奥に隠れて見えにくいフランス上流社会のパリをあらわにします。 そこで、 あの鼻…

「哲学者の密室」笠井潔 痛烈なハイデガー批判

笠井潔さんの、10年という時間、2000ページ、まさに渾身の傑作本格ミステリー小説であるが、 残念ながら商業的には成功していない。(もちろん作家にはそんな目論見はない) なぜか。 まず第一に、 ドイツ哲学の巨人ハイデッガーが小説ではマルティン…

「ジェノサイド」高野和明

サイエンスフィクションでこの種の感動を覚えたのは、ずいぶん昔のことのように思い出されます。 およそ50年前、マイケル・クライトンの出世作「アンドロメダ病原体」を読んだあの時の興奮がよみがえりました。 有り得そうで有り得ない、有り得ないようで…

三条西実隆 古今伝授の行方

「やまと歌は人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれるける。世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心に思ふことを、見るもの、聞くものにつけて、言い出だせるなり」 あまりにも有名な紀貫之の仮名序の書き出しです。 とにかく「古今和歌集」「源氏…

凍氷 ジェイムズ・トンプソン

凍氷 (集英社文庫)(2014/02/20)ジェイムズ・トンプソン商品詳細を見る 極夜 カーモスの続編です。舞台はヘルシンキ、マイナス10度と暖かくなりました。 妻ケイトの希望通りヘルシンキへ移動となったカリ・ヴァーラ警部は猟奇的殺人事件の捜査、加えて第二…

極夜(カーモス)ジェイムス・トンプソン

極夜 カーモス (集英社文庫)(2013/02/20)ジェイムズ・トンプソン商品詳細を見る フィンランド発のミステリー、それも極北ラップランド。 「ポーチのかかっている温度計はマイナス三十二度。暖かくなってきた。」 これは寒い。 「ストロベリーナイト」誉田さ…

「タンゴステップ」ヘニング・マンケル

タンゴステップ〈上〉 (創元推理文庫)(2008/05/23)ヘニング マンケル商品詳細を見る 文庫本上下巻の大部をわずか4日で読み切りました、というより読まされました。 スウェーデンのミステリー作家ヘニング・マンケルの傑作です。 プロローグ、舞台は1945…

北欧ミステリーを読む

靄の旋律 国家刑事警察 特別捜査班 (集英社文庫)(2012/09/20)アルネ・ダール商品詳細を見る 「靄の旋律」アルネ・ダール やはりスウェーデンのミステリー、原作を読んでいないがTVドラマでの仕上がりをみると傑作。 「スウェーデン実業界の大物が連続して…

心理学的にありえない

心理学的にありえない 上(2011/09/13)アダム・ファウアー商品詳細を見るヒット作「数学的にありえない」の著者による第二弾。 気をひかれる巧みな表題ですが心理学とは関係ありません。あえていえばSFファンタジー小説、好みが分かれます。 筒井康隆さんの七…

「海と三つの短編」立原正秋アーカイブス(2)

立原正秋さんは両刀遣い、つまり純文学と大衆小説を意識的かつ挑戦的に使い分けた作家である。 氏が流行作家として世に受け入れられた大衆小説の話題には事欠かないが、 もういっぽうの純文学世界はどうであったろうか。 わたしはもっとも美しい純文学作品と…

「残りの雪」立原正秋アーカイブス(1)

残りの雪 (新潮文庫)(1980/07/29)立原 正秋商品詳細を見る 立原正秋さんの代表作といえば「春の鐘」か「残りの雪」ということになりましょうか。 いずれも発表当時話題を呼んだ日経新聞の連載小説ですが、今日の渡辺淳一さんの恋愛小説のさきがけ、今風に言…

「嵐が丘」エミリー・ブロンテ 奇跡の作家

嵐が丘 [DVD] FRT-007(2006/12/14)ローレンス・オリビエ、デヴィッド・ニーヴン 他商品詳細を見る ふつうイギリス文学史を俯瞰すれば三巨人としてチョウサー、シェークスピア、ディケンズをあげる人が多い。 しかし一般読者としてはイギリス文学といえばエミ…

数学的にありえない(小説)アダム・ファウアー

数学的にありえない〈上〉 (文春文庫)(2009/08/04)アダム ファウアー商品詳細を見る 本の虫故児玉清さん絶賛「かつてない超のつく面白さに僕は悶絶した」といわれても、ねー。 かの筒井康隆さんの名作「時をかける少女」のいわばアメリカ版。 主人公はいたい…

回顧 井上ひさし

近松門左衛門以来の天才戯作者、小説家井上ひさしさんを回顧しておこう。 戯曲家井上ひさし 観た舞台は「日本人のへそ」「道元の冒険」「泣き虫なまいき石川啄木」「組曲虐殺」くらい。笑い転げて、石原さとみさんがうまいな~という印象。みんなとにかく早…

漱石はブックリーダーで読む

最近漱石の「門」の欠落していた原稿の一部が見つかったらしい。 だからといってなんの発見もなかったのだ。 「門」はわたしにとって漱石作品のなかではいちばんのお気に入りなのだ。だからちょっと気になった。 漱石は岩波の全集で読むべし、とのご宣託もあ…

ヨシフ・ブロツキー ヴェネチア その1)

ヴェネツィア 水の迷宮の夢(1996/01/17)ヨシフ・ブロツキー商品詳細を見る ヴィスコンティの映画「ベニスに死す」に触発されて、ヴェネチアにかかわるさまざまなイメージを思い出している。 この町の美しさ、すぐにヨシフ・ブロツキイの短編小説「ウォーター…

Dの挑戦 ドストエフスキーの方法

「悪霊」 「ニコライ・スタヴローギンは事実、部屋の中にはいっていた。彼はごく静かに部屋にはいってくると、一瞬戸口で立ちどまり、もの静かな眼差しで一座をみわたした。」 やっと出てきたか、と言いたいけど、スタヴローギンの登場で物語は動き出す。 さ…

「推定無罪」から23年後の続編「無罪」スコット・トゥロー

スコット・トゥローのベストセラー小説というより、 1990年公開の映画「推定無罪」の続編といったほうがわかりやすいでしょう。 法廷ミステリー映画としてはおそらく名作「情婦」につぐ傑作映画でした。 推定無罪 [DVD](2000/04/21)ハリソン・フォード、…