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メルビル「白鯨」という不条理劇

                        

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このブログをスターバックスで書いている。

シアトル生まれのこのコーヒーチェーン店の名前の由来は「白鯨」に登場する一等航海士「スターバック」からである。

ハーマン・メルビルといえば20年前、「代書人バートルビー」という奇妙な不条理小説をなかばあきれながら読んだ記憶がある。

映画「グレゴリー・ペックの白鯨」となかなか結びつかなかったが、このドラマでなるほどと了解した。

やはり同じ不条理劇だったのだ。

1840年当時の先住民や黒人、福音主義の牧師、従順な女性を描きつつ、当時のアメリカの拡張主義「フロンティアスピリッツ」への懐疑が描かれている。とくにインディアン、黒人への共感など考えられない時代であったはず。コンラッドの「闇の奥」を思わせる現代性がある。

ペリー来航は1854年だからメルビルが「白鯨」を書いていたころになる。

日本近海での捕鯨がさかんであったことと無関係ではない。

ストウ夫人の「アンクルトムの小屋」が発表されたのもこのころ、奴隷制反対運動や女性参政権運動「セネカフォールズ大会」があったのもこのころ、時代は動いていたのである。メルビルは鋭敏であった。

しかし、メルビルは生前まったく評価されなかった。ヨーロッパでカフカ登場まで待たなけれならない、早すぎた天才であったのだろう。