minerva2050 午後の愉しみ

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渡辺淳一「無影燈」


無影燈無影燈
(2001/02/01)
渡辺 淳一

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このところ渡辺淳一の小説を立て続けに読んでいる。

べつに評判の不倫ポルノ小説をニヤリとして読んでいるわけではない。

あえて言えば、渡辺淳一という作家がどのあたりから流行作家というワナに落ちて身を持ち崩してしまったのかを知りたいのである。

振り返れば純文学作家としてのピークは1970年代「無影燈」のころまでであったろうと思う。

当時、文章力はまだささくれて洗練されていないが、それだけに圧倒的な迫力、躍動感がある。

ニヒルで優秀な外科医直江が個人病院での治療を通して医療の矛盾と理想を語っている。

医者がところかまわずタバコを吸う場面が多く、現代からすれば笑ってしまうが、

どうも禁煙社会は笑えるほど健康な社会になったとは思えない。

むしろ社会状況は40年後のいまでも同じで、今日「無影燈」のような社会小説にお目にかからないほうが不思議なのである。

作家が大人になったのか、流行作家ゆえか、目に見えぬ社会的圧力に屈したのか、そこはわからないが、

行き着く先が『失楽園』『愛の流刑地』の心中ものではいかにもさびしい。