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「長崎殺人事件」浅見光彦シリーズ(16)


長崎殺人事件: 「浅見光彦×日本列島縦断」シリーズ (光文社文庫)長崎殺人事件: 「浅見光彦×日本列島縦断」シリーズ (光文社文庫)
(2011/10/12)
内田 康夫

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数ある浅見光彦シリーズの中でも傑作との評判の高い作品。

その理由は事件がグラバー邸や長崎市内の名所に限られていること、

名物のカステラの「松風軒」「江口のべっこう」を巧みに物語に取り込んでなお違和感がないこと、

ミステリー本来の読者の意表をつくドラマチックな展開によるのでしょう。

浅見光彦シリーズはとりあえず原作を読んでから撮りためたテレビドラマを見る、という楽しみ方を習慣にしています。

旅情ミステリーとよばれるこのシリーズ、原作であれドラマであれ日本全国各地の風光明媚な景色を楽しめばいいのです。不思議と小説となると地名や地域のことが記憶に残ります。

テレビドラマ版浅見光彦シリーズはテレビの公共性ということや、スポンサーへの配慮もあるのでしょう。原作の持つ苦い社会性を廃して、コミカルな家庭ドラマに脚色されていますが、まあそれぞれ事情があります。

「長崎殺人事件」原作では「ポルトガル村」というレジャーランド計画にまつわる収賄事件が中心テーマ。

1987年の作ですから「長崎オランダ村ハウステンボス」が話題になっていた時期、作者はなにかキナ臭いものを感じられたのでしょう。

長崎オランダ村ハウステンボス」はいったんは経営破たんし、結局行政側に責任転嫁され、いわばばば抜きゲーム状態の今日から振り返れば作者の卓見であったということになりましょう。

内田康夫氏、もちろん名文家でありますが、おそろしく鼻のきく名探偵でもあります。