minerva2050 午後の愉しみ

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プルースト 「長編小説作家」という時間の気配り


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長編小説が好きである。

どのくらい長いものから長編小説になるかは読む人の個人差で決まるのであろうが、

例えばわが国は源氏物語大菩薩峠」まで長編小説大国であるかもしれない、最近では井上ひさし「四千万歩の男」がある。

海外ではプルースト「失われたときを求めて」がその最たるものであろう。

自称「本の虫」のわたしも第二部「スワンの恋」までとおわりの第七部「見出されたとき」、中抜きで止まっている。


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また短編作家であろうとも長生きで営々と筆を折らず書き続けた作家で全集30巻になんなんとすればある意味で長編小説家ともいえるであろう。

彼らは時間への気配りというか人生の時間割というものをどう配分したのであろうか。

ある者はまるで永遠に生きるがごとく、またある者はプルーストのごとく明日には死ぬと予感して書き続けたか。

作家の生死と作品にはもちろんある種の相関関係はあるし、心して読まなければなるまい。

三島由紀夫暁の寺」のように残酷なものもある。

いわゆるシリーズものという大衆小説のジャンルがある。

誰でも知ってるキャラを何冊も何十冊も活躍させるのもプロ作家とはいえ気苦労なことだろうし、

芸術肌とはまた違う特殊な才能だと思う。

例えば、海外ミステリーでウオッチしている作家たちを紹介すると、なあんだというかもしれないが、まあ。

外国では、エド・マクベイン87分署シリーズg>は正確ではないが58冊。

一昔前のアメリカンスタイルだが、いまの日本人のわたしたちには居心地がいい。いわゆるマイノリティたちの関係性もよくわかる。海外ドラマローアンドオーダーやCSIファンにはたまらない。

まず当たりはずれがない。

ディック・フランシスの競馬シリーズ45冊、おしどり夫婦ゆえの客観性だろうか、読者の求めるものをよく知っているにくい作風。

ロバート・B・パーカーのスペンサーシリーズの35冊、箸にも棒にもかからない下手作家が時間とともに成長し、

文豪に殿堂入りして死んだのだから作家冥利につきるだろう。

女性作家ではあまりにも有名なアガサ・クリスティポアロシリーズ35冊、ほぼ全作名作。

スー・グラフトンの私立探偵キンジーシリーズ、ABC順にSまで、Zで終わりにしようとはなから考えて書き始めているのだからおそれいる。

全体に淡白な作風だが、だから長続きしているともいえる。

サラ・パレツキーの私立探偵ウォーショースキーシリーズ15冊、この人もだんだん社会派巨匠になってきている。いわゆるレッドパージを扱った「ブラックリスト」は名作。

シリーズ作家は特殊な才能といったが、続かない人もいるのだ。

才能、人気、金満におぼれる、ということなのだろう。

パトリシア・コーンウェルの検視官スカーベッタシリーズは現在おそらく20冊目を書いていいるだろうが、10冊目くらいから失敗作の連続となってしまって立ち直れないでいる。

またローレンス・ブロックにはアル中探偵マット・スカダー・シリーズ17冊というのがある。ニューヨークを舞台にしたハードボイルドだが、努力の甲斐あってアル中から立ち直り、恋人とは結婚子供ができる。それはお幸せな人生ではあるが、小説としてはアル中探偵がニューヨークを徘徊するからおもしろいので、マイホーム主義の中年おじさんでは困る。これではさすがに作家生命が尽きる。

「書き続けた」日本人作家といえば同時代を生きた井上ひさしさん。例えば彼の全著作の全集を企画するとしよう、おそらく100巻は下るまい。書くことに憑かれた狂気といっていい。(ご冥福をお祈りします、遺稿がお父様への鎮魂歌組曲虐殺」でよかった)

ことほど左様に小説家とは大変なのである。

                  

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