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「嵐が丘」エミリー・ブロンテ 奇跡の作家


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(2006/12/14)
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 ふつうイギリス文学史を俯瞰すれば三巨人としてチョウサー、シェークスピアディケンズをあげる人が多い。

しかし一般読者としてはイギリス文学といえばエミリー・ブロンテの「嵐が丘」のほうがなじみやすいのではなかろうか。

戦後いち早く公開されたウイリアム・ワイラー監督の名画による影響もあるのだろうが、ヨークシャーの荒涼たる風景の中で展開される愛憎劇に読者も観客も息を呑む。

小説の評価はともかく、わずか一冊の小説を書き残して亡くなったエミリー・ブロンテは我が国の樋口一葉の境涯とダブル。エミリーは30歳でなくなるが、筆は27歳ごろといわれる。

社会経験の乏しい若い女性に、資料も使わず民法的(当時)にもこれほど完璧な小説世界が可能なのだろうか。

小説作法も時間と空間を入れ替えるいわゆる入れ子構造という複雑な構成の手法をどう編み出したのであろうか。

物語はゴシックロマン小説的とも言われるが、ケルト民族の説話を思わせるような幻想的で不気味な展開は

大衆小説の域をはるかに超えて、19世紀イギリスの巫女の呪術的宣辞とも思われる。

例えば、ロックウッドの夢に「ブランデル師の説教」を見るが、

七十一番目の最初の罪を犯した者の弾劾は何を意味するのか、罪人はヒースクリフなのかキャサリンなのか、

あるいは著者自身エミリー・ブロンテの死の予言とも思われる。

洋の東西を問わず、ときとして批評さえも拒む奇跡の作家があらわれるものである。

(あらすじ)

イングランド北部のヨークシャー。激しい嵐が吹き荒れるある日、荒野にそびえ立つ「嵐が丘」と呼ばれる邸に、その主人のアーンショーが、旅先から一人の孤児を連れ帰る。ヒースクリフと名づけ家族の一員に加えた。

アンショウには息子のヒンドリーと娘のキャシーがいたが、ヒンドリーはヒースクリフを憎悪し、ことあるごとに虐待した。男優りのキャシーはヒースクリフとよく遊んだ。ヒースクリフにはキャッシーの存在が心の支えだった。

間もなくしてアーンショーが病死、当主ちなったヒンドリーの放蕩三昧に家運が傾きを見せる。キャシーはヒースクリフに激しく惹かれながらも、華やかな上流生活に憧れていた。

舞踏会を見に行った時に、キャシーはリントン家の嗣子エドガーはに求婚されるが、キャシーはヒースクリフと一身同体であり、彼と別れられないことを悟る。しかし、ヒースクリフは誤解して、嵐ケ丘から姿を消してしまう…。

キャシーはエドガーと結婚した。2年後、ヒースクリフは南米で成功し、見違える姿で嵐ケ丘に戻った。彼は酒で財産を蕩尽したヒンドリーから嵐ケ丘を買いとり、リントン一家への復讐の実行の機会を待っていた。

彼はエドガーの妹イザベルに言い寄り求婚した。キャシーにはヒースクリフの企てが判っていた。やがてキャシーは病床に就き、ヒースクリフこそ本当に愛する人だったと告白して逝った。ヒースクリフはキャシーの遺骸に、自分の生ある限り亡霊となって訪ねてくれと絶叫した。そして吹雪の夜、彼はキャシーの亡霊の呼び声に憑かれた者のようにペニストーンの岩の下まで行く