心理学的にありえない
心理学的にありえない 上 (2011/09/13) アダム・ファウアー 商品詳細を見る |
気をひかれる巧みな表題ですが心理学とは関係ありません。あえていえばSFファンタジー小説、好みが分かれます。
筒井康隆さんの七瀬シリーズを楽しめるひとならむちゃおもしろいし、七瀬シリーズの十倍は濃い傑作です。
著者の特別な人生経験と明晰な頭脳がシンクロして書き上げた不思議な世界。
前作でもそうですが、犬の嗅覚を思わせる臭いの記述、プリズムを覗くかのような色表現はおそらく著者の実体験なのでしょう、異常なのにリアリティがあります。
ああそういうこともあり得るかな、と思わせたのは「タバコの効用」百害あって一利なし、世の嫌われ者のタバコが活躍する。
「肺の内面が数秒でニコチンを吸収する。すると、すぐさまそれが脳に伝わり、アドレナリン(心拍数と血圧をあげる)、ドーパミン(喫煙者を喜びで満たす)、エンドルフィン(痛覚受容器をブロックする)が放出される。
この組み合わせが至福の境地を生む。ひどく怖い思いをしたときなど、タバコほどいいものはない。
」と書く。喫煙者なら「そうなんだよなあ」と思わず膝を打つくだりです。
内容(「BOOK」データベースより)
人の微細な表情から心理を読み取る才能を持つ心理アナリスト、イライジャ。聴衆に圧倒的な感動を与える天才ヴァイオリニスト、ウィンター。接点のない二人は、いま、巨大な陰謀に巻き込まれた。破滅の時へ向けて、カウントダウンは着々と進んでゆく。計画を阻止しようとする男女、ラズロとダリアン。そして奇怪なカリスマを発揮するカルト教祖ヴァレンティヌス。ここに謎めいた物語がいっせいに走り出す、災厄の予感を満載して。イライジャとウィンターから奪われた銀のネックレス。突如として発現する特殊能力。すべての源流は二人の過去にある―。『数学的にありえない』で見せた鬼才のストーリーテリング、またも炸裂。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ファウアー,アダム
1970年生まれ。ブルックリン在住。幼い頃、病で視力を失い、度重なる手術のため少年時代の多くを病院ですごし、病床で小説の朗読テープを「濫読」する。やがて視力は回復、ペンシルヴァニア大学で統計学を学び、スタンフォード大学でMBAを取得、有名企業でマーケティングを担当。2005年、『数学的にありえない』で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)