minerva2050 午後の愉しみ

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北欧ミステリーを読む


靄の旋律 国家刑事警察 特別捜査班 (集英社文庫)靄の旋律 国家刑事警察 特別捜査班 (集英社文庫)
(2012/09/20)
アルネ・ダール

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「靄の旋律」アルネ・ダール

やはりスウェーデンのミステリー、原作を読んでいないがTVドラマでの仕上がりをみると傑作。

スウェーデン実業界の大物が連続して殺された。頭に2発の銃弾を撃つ手口はマフィアの処刑スタイルだ。国民を震撼させている大事件を一刻も早く解決するべく、国家刑事警察の特別捜査班が編成された。職務規定違反の疑いで内部調査を受けていたポール・イェルムをはじめ、それぞれに事情をかかえる刑事6名により、精力的な捜査が始まった。個性的なメンバーの活躍と地道な謎解きで人気の警察小説第1弾。」

物語の展開もさることながら6人の刑事の人物造形がじつにうまい。

映画は総合芸術といわれる。

「靄の旋律」はじつに美しいドラマ(映画)である。演出家、俳優、カメラマン、音楽家、編集者、それぞれの役割分担の高い技術者の集団が存在していることの証左である。

例えば殺人シーンのショット、なんでもない位置からのカットの連続、撮影、編集の技術力で悲劇的シーンを作り上げている。

もともと芸術性の高い良質で真面目な映画を多数世に送り出してきたお国柄である。ここに来てミステリー映画という商業性の高いジャンルの発見は宝の山となっているはず。

ハリウッドやBBCが真似てもかなわないことは「ミレニアム」「ヴァランダー」のリメイク作品を見比べればよくわかる。

日本でもスウェーデンドラマのDVD化、商業ルートの開発に熱心になったがいい。

そして、おまけとして、スウェーデン映画にはレイモンド・チャンドラーヒッチコックが憧れたブロンド、青い瞳の美しい女性たちが必ず登場する。


殺人者の顔 (創元推理文庫)殺人者の顔 (創元推理文庫)
(2001/01)
ヘニング マンケル

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「殺人者の顔」ヘニング マンケル

ヴァランダー刑事登場の第1作。

「静かに暮らしていた老夫婦を、誰がかくも無残に殺害したのか。ヴァランダー刑事を始め、人間味豊かなイースター署の面々が必死の捜査を展開する.燭光が見えるのは果たしていつ・・・?

マルティン・ベック・シリーズの開始から四半世紀、スウェーデン警察に新たな歴史を刻む名シリーズの幕があがる!」

テレビドラマ化されたスウェーデン版とイギリス版を見てから読み始めたヴァランダーシリーズ。やはり原作のほうがはるかにおもしろい。

テレビドラマでは「スウェーデン警察クルト・ヴァランダー」のほうが原作に忠実でスコーネ地方の生活臭が嗅げる。ベルイマン流の仕上げに好感がもてる。ただDVDでは発売されていないのだろう

ケネス・プラナー版はメジャー級、評判はすこぶるいい。ただ美しすぎるのだ、好みの分かれるところ。

いまではスウェーデンスコーネ地方の美しい風景はストックホルムよりはるかに有名になってしまった。世界を席巻するミステリー小説の力はおそろしいほどだ。

原作でなければわからいこともある。

例えばヴァランダーがしょっちゅう聴くオペラ、テノール歌手志望の友人のマネージャーをしてもいいほどクラッシク好きで造詣も深いなどは。

わたしのお薦めは、英国推理作家協会賞(CWA賞)の「目くらましの道」ヴァランダー刑事が政界を巻き込む陰謀に敢然と立ち向かう。


Killing, the [DVD] [Import]Killing, the [DVD] [Import]
(2011/04/04)
Killing

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「THE KILLING/キリング」

デンマーク発のTVドラマ、ひとつの殺人事件を解決するまでの捜査過程、20日間を20話で描いた作品。

古典的ドラマ手法、かつてのアメリカドラマ「逃亡者」のように、次から次と謎を呼び観る者を引っ張ってきっと次回が観たくなる仕掛け。

日ごろ見かけないコペンハーゲン市の街並みが美しい。

サラ・ルンド役のソフィー・グローベールはこの一作で世界的女優になってしまった。

さっそくアメリカでリメイク「THE KILLING ~闇に眠る美少女 シーズン」が作られた。

舞台をシアトル市に移し、雨の日ばかりの設定でデヴィッド・フィンチャー風の色調を抑えた暗い画づくりで成功している。

「ゾウズ・フー・キル 殺意の深層」

「21世紀に入ってスウェーデンの小説“ミレニアム”3部作がベストセラーとなり、その第1作が米国でも「ドラゴン・タトゥーの女」として映画化されるなど、北欧生まれのミステリーが注目を集めているが、本作は2011年3月にデンマークのTV2局で放送。同国の女性作家エルセベート・エゴームの小説が原作で、次々と発生する猟奇的な連続殺人事件に、女性刑事カトリーネ(ラウラ・バック)と法医学精神科医トーマス(映画『光のほうへ』のヤコブ・セダーグレン)のコンビが挑むサスペンス・ミステリー。」

アメリカでリメイクが予定されているデンマークで大ヒットのクライム・サスペンス。

女性刑事カトリーネ役のラウラ・バックの魅力に負うところが大きい作品、リメイクもあまり期待はできない。

それより素直にお任せで輸入したほうがいい、シーズン3が楽しみ。

ヒット作の続く北欧ミステリー

上質なミステリー小説の発達はその国の社会、文化の成熟度と相関関係にある。

食通が豊かな味覚の持ち主でなければ、どんなに名人の料理人が絶品料理を出しても猫に小判ということはあるのだ。

少し大げさに言えば、

私たちの知らぬ間に、北欧の国々は福祉国家として社会制度の充実、確実な民主制度の定着、安心、安全な人々のくらしの保障など成熟した国民国家になっていたということだろう。

わたしの信条は堀田善衞の「紅旗征戎吾ガ事二非ズ(藤原定家)」が基本であるから、北欧諸国の政治体制になんの関心もないが、

これらの国の市民の「美的感性の成熟度が」高いことは確かであろうし、だからこそ紡がれる良質な文学作品を期待すればいい。