【虚空蔵求聞持法】 中沢新一「雪片曲線論」を読む(2)
さて、中沢新一さんの直覚、わが国における仏教思想の頂点が後にも先にも空海の真言密教であることは疑う余地のないことでありますが、
先だって山岳宗教者としての空海の謎に「虚空蔵菩薩求聞持法」の実践という逸話があります。
辞書によれば、こくうぞうぐもんじほう【虚空蔵求聞持法】とは
〘仏〙 虚空蔵菩薩を本尊として行う密教の修法。理解力・記憶力を高めるという。若き日に空海の修したことで知られる。求聞持法。虚空蔵菩薩求聞持法。
ある短い経文を百万遍となえれば記憶力が高まるとの話、そんなノウハウがあるなら現代人の多くが知りたいと思うのは人情ですが、これがよくわかりません。
ただこんなヒントなら?
昭和60年代、中村天風というひとの講話のひとこま。
「お前の頭の中はな、私がどんないいことを言っても、そいつをみんな、こぼしちまう。
さっきの、水のいっぱいはいっているコップと同じような、そういう状態だと見ているんだ。
いつになったら、この水をあけて来るかな。
水をあけて来さえすれば、そのあとで湯を注ぎ込んでやれば、湯がいっぱいになるんだがな。
お前の頭の中には、いままでの役にも立たない屁理屈がいっぱい詰まっている。」
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天風先生が知らず教えを乞うたのは、カリアッパ師、チベット仏教における「カルマ・カギュ派」の第十五世管長でありました。
ざっくりと言えば、空海の虚空蔵菩薩求聞持法もカリアッパ師の教えも、要は頭の中のリセット法ではなかったか、と思うんですね。