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京鹿子娘道成寺 (日本舞踊のゆくえ 5)

「日本舞踊のゆくえ 5」では、坂東玉三郎さんの「京鹿子娘道成寺」を通じて歌舞伎舞踊の楽しさを話します。長文になりますがご辛抱ください。


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(2003/01/25)
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坂東玉三郎

2013年正月おトソ気分でDVD坂東玉三郎舞踊集その拾「京鹿子娘道成寺」を観ました。玉三郎さんの舞踊では「鷺娘」が有名ですが、個人的には娘道成寺の舞台が最高傑作だと思います。

世界の舞踊世界の中でも傑出した作品でしょう。

日本舞踊の世界でも、能仕舞い、手踊り、花笠踊り、鞨鼓(かっこ)と日本舞踊のすべてを織り込んだ手の込んだ作品です。日本舞踊に関心のある人には必見です。

日本版オペラ「椿姫」として

紀伊半島をバス観光しますとほぼ確実に和歌山県日高川町にある道成寺を訪ねて、安珍・清姫の悲恋物語をだれでも知ることになりますが、その物語をイメージするとおもしろくありません。

たしかに歌舞伎「京鹿子娘道成寺」は伝説、能「道成寺」を下敷きにしていますが、歌舞伎ならではの複雑な構造に仕上げています。

イタリアオペラに「椿姫」という貴公子と高級娼婦の悲恋という傑作オペラがありますが、

わたしは歌舞伎「京鹿子娘道成寺」を日本版のオペラ「椿姫」として観ています。

ドラマの展開はまったく違いますが、ヒロインの胸のうちは同じです。

娼婦(白拍子)、生娘、狂女(蛇体)、一人舞踊のなかで演じ分ける技量が問われますし、観客も見分ける眼が必要です。

生娘が娼婦となり、娼婦が狂女となる、ならざるを得ない悲劇なのです。

はじめに僧たちに「白拍子か生娘か?」と問われて「白拍子」と答えています。

白拍子は遊女のことか?となりますと難しいですがこの歌舞伎の設定でははっきりしています。遊女つまり娼婦です。

鐘入りで蛇体に変身しますが、わたしは恋に狂う「狂女」とみます。

鐘は逃げる男のメタファー(隠喩)として存在します。

鐘入りとはじつは男を殺した、という破局に終わるということになります。

京鹿子娘道成寺 (日本舞踊のゆくえ 6)へ続く