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「藤沢周平」を読む(その1)

藤沢周平

愛憎の檻 -獄医立花登手控え NHK連続ドラマで放映中

>藤沢周平さんの小説はかなり読んでいたつもりが調べてみると、まだ半分にも満たないのものでありました。(下の作品集のうち明るいブルーラインが読了)

ただ年月だけはかけていますからよき読者の一人であろうとは思います。

藤沢作品の特徴はその端正な文章はもちろんですが、多くの読者がそうでありますように、私も共感するのは偽りのないこの世への「絶望」の表現です。

例えば、

初期の傑作「又蔵の火」

「兄の死を、悲しんだものは誰もいなかっただろう」という思いが、弟虎松(又蔵)の胸をえぐる。

「兄にかわって、ひと言言うべきことがある」。

この世の不条理を断言されている。

よく「用心棒日月抄」あたりから明るくなったといわれますし、また先生ご自身もあとがきでそう書いておられます。

しかし、やはり最後まで「絶望」の淵においでであったでしょう。

伴侶を失ったもの、あるいは子を失った親が、真実癒やされることは生涯あろうはずがありません。

おそらく先生も悲しみに耐え続けなければならない人生であったと思います。

ただ不思議は藤沢作品に神、仏にすがるものが出てこないことです。

むしろ時代小説のリアリズムとしてはいささか腑に落ちないところです。

「神が不在」の現代を時代小説を借りて語っているとすれば、まさに凍えつくような人生観といえます。

続く

文庫本作品集は次の通り

暗殺の年輪

黒い縄・暗殺の年輪・ただ一撃・溟い海・囮 文春文庫     昭和48年9月

又蔵の火

又蔵の火・帰郷・賽子無宿・割れた月・恐喝 文春文庫      昭和49年1月

闇の梯子

父と呼べ・闇の梯子・入墨・相模守は無害・紅の記憶 文春文庫 昭和49年6月

雲奔る 小説・雲井龍雄

  文春文庫                                昭和50年5月

冤罪

証拠人・唆す・潮田伝五郎置文・密夫の顔・夜の城・臍曲がり新左・一顆の瓜・十四人目の男・冤罪 新潮文庫                       昭和51年1月

暁のひかり

暁のひかり・馬五郎焼身・おふく・穴熊・しぶとい連中・冬の潮

  文春文庫                              昭和51年3月

逆軍の旗

逆軍の旗・上意改まる・二人の失踪人・幻にあらず 文春文庫  昭和51年6月

竹光始末

竹光始末・恐妻の剣・石を抱く・冬の終わりに・乱心・遠方より来る

  新潮文庫                               昭和51年7月

時雨のあと

雪明かり・闇の顔・時雨のあと・意気地なし・秘密・果し合い・鱗雲 新潮文庫  昭和51年8月

義民が駆ける   中公文庫                    昭和51年9月

闇の歯車   講談社文庫                     昭和52年1月

闇の穴

木綿触れ・小川の辺・闇の穴・閉ざされた口・狂気・荒れ野・夜が軋む

  新潮文庫                             昭和52年2月

喜多川歌麿女絵草紙   文春文庫                昭和52年5月

長門守の陰謀

夢ぞ見し・春の雪・夕べの光・遠い少女・長門守の陰謀

  文春文庫                             昭和53年1月

春秋山伏記   新潮文庫                      昭和53年2月

一茶   文春文庫                          昭和53年6月

用心棒日月抄   新潮文庫                    昭和53年8月 

たそがれ清兵衛

たそがれ清兵衛・うらなり与右衛門・ごますり甚内・ど忘れ万平・だんまり弥助・かが泣き半平・日和見与次郎・祝い人助八 新潮文庫      昭和53年8月

神隠し

拐し・昔の仲間・疫病神・告白・三年目・鬼・桃の木の下で・小鶴・暗い渦・夜の雷雨・神隠し

新潮文庫                                昭和54年1月

消えた女 -彫師伊之助捕物覚え-   新潮文庫          昭和54年7月

回天の門   文春文庫                        昭和54年11月

驟り雨

贈り物・うしろ姿・ちきしょう!・驟り雨・人殺し・朝焼け・遅いしあわせ・運の尽き・捨てた女・泣かない女

 新潮文庫                               昭和55年2月

橋ものがたり

約束・小ぬか雨・思い違い・赤い夕日・小さな橋で・氷雨降る・殺すな・まぼろしの橋・吹く風は秋・川霧 新潮文庫                              昭和55年4月

霧の果て -神谷玄次郎捕物控-   文春文庫            昭和55年5月

春秋の檻 -獄医立花登手控え-   講談社文庫         昭和55年6月

闇の傀儡師(上)(下)   文春文庫                   昭和55年7月

孤剣 用心棒日月抄   新潮文庫                   昭和55年7月

隠し剣孤影抄

邪剣竜尾返し・臆病剣松風・暗殺剣虎ノ目・必殺剣鳥刺し・隠し剣鬼ノ爪・女人剣さざ波・悲運剣芦刈り・宿命剣鬼走り 文春文庫                                                              昭和56年1月

隠し剣秋風抄

酒乱剣石割り・汚名剣双燕・女難剣雷切り・陽狂剣かげろう・偏屈剣蟇ノ舌・好色剣流水・暗黒剣千鳥・孤立剣残月・盲目剣 返し 文春文庫                                                       昭和56年2月

夜の橋

鬼気・夜の橋・裏切り・一夢の敗北・冬の足音・梅薫る・孫十の逆襲・泣くな、けい・暗い鏡 中公文庫                            昭和56年2月

時雨みち

帰還せず・飛べ、左五郎・山桜・盗み喰い・滴る汗・幼い声・夜の道・おばさん・亭主の仲間・おさんが呼ぶ・時雨みち 新潮文庫            昭和56年4月

風雪の檻  -獄医立花登手控え-   講談社文庫         昭和56年4月

霜の朝 報復・泣く母・嘘・密告・おとくの神・虹の空・禍福・追われる男・怠け者・歳月・霜の朝 新潮文庫                          昭和56年9月

漆黒の霧の中で -彫師伊之助捕物覚え-   新潮文庫       昭和57年2月

愛憎の檻 -獄医立花登手控え-   講談社文庫            昭和57年3月

密謀(上)(下)   新潮文庫                        昭和57年4月

よろずや平四郎活人剣(上)(下)   文春文庫             昭和58年2月

人間の檻 -獄医立花登手控え-   講談社文庫           昭和58年4月

刺客 用心棒日月抄   新潮文庫                    昭和58年6月

龍を見た男

帰って来た女・おつぎ・龍を見た男・逃走・弾む声・女下駄・遠い別れ・失踪・切腹 新潮文庫                                  昭和58年8月

海鳴り(上)(下)   文春文庫                      昭和59年4月

風の果て(上)(下)   文春文庫                     昭和60年1月

決闘の辻 二天の窟-宮本武蔵・死闘-神子上典膳・夜明けの月影-柳生但馬守宗矩・師弟剣-諸岡一羽斎と弟子たち・飛ぶ猿-愛洲移香斎

   講談社文庫                             昭和60年7月

ささやく河 -彫師伊之助捕物覚え-   新潮文庫          昭和60年10月

白き瓶 小説 長塚節   文春文庫                   昭和60年11月

花のあと

鬼ごっこ・雪間草・寒い灯・疑惑・旅の誘い・冬の日・悪癖・花のあと 文春文庫

                                     昭和60年11月

小説の周辺 エッセイ 文春文庫                   昭和61年12月

本所しぐれ町物語   新潮文庫                   昭和62年3月

蝉しぐれ   文春文庫                         昭和63年5月

周平独言 エッセイ 中公文庫                     昭和56年9月

麦屋町昼下がり

麦屋町昼下がり・三の丸広場下城どき・山姥橋夜五ツ・榎屋敷宵の春月 文春文庫

                                      平成1年3月

市塵   講談社文庫                          平成1年5月

三屋清左衛門残日録   文春文庫                  平成1年9月

玄鳥

玄鳥・三月の  ・闇討ち・鶺鴒・浦島 文春文庫         平成3年2月

凶刃 用心棒日月抄   新潮文庫                  平成3年3月

天保悪党伝   角川文庫                       平成4年3月

秘太刀馬の骨   文春文庫                     平成4年12月

夜消える

夜消える・にがい再会・永代橋・踊る手・消息・初つばめ・遠ざかる声 文春文庫

                                    平成6年3月

半生の記 エッセイ 文春文庫                   平成6年9月

ふるさとへ廻る六部は エッセイ 新潮文庫           平成7年

日暮れ竹河岸 江戸おんな絵姿十二景・広重「名所江戸百景」より 文春文庫

                                   平成8年11月

漆の実のみのる国(上)(下)   文春文庫           平成9年5月

静かな木

岡安家の犬・静かな木・偉丈夫

  新潮文庫                          平成19年1月