ベツレヘムの密告者 パレスチナのいまがわかる
国連学校の歴史教師オマー・ユセフは、ジョージ・サバがイスラエルへの内通者と名指しされ、テロリスト射殺幇助の容疑で逮捕されたと知らされて耳を疑った。教え子のなかでもとびぬけて優秀で誠実なサバが内通者とは?動かない警察に業を煮やしたオマー・ユセフは、周囲の制止を振り切り、銃煙漂う街を徒手空拳で事件の真相を追い始めたが…。パレスチナの庶民の視点で描いた異色の本格ミステリ。CWA新人賞受賞作
まず、いくらかのパレスチナ情報を得て読みはじめないと戸惑ってしまうかもしれません。
例えばイスラエルの中であってもベツレヘムはパレスチナ自治区のひとつであるため
裁判所、警察署、役所はパレスチナ人が管理していること、
パレスチナ人にはイスラエル建国前の固有の土地や集落があること、
パレスチナでは昔からイスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒が混住していること、
パレスチナ人は家系を大切にすること、などでしょうか。
そうした混沌とした世界での殺人事件を教師の主人公が推理するという展開ですから話はややこしい。
しかしどっぷりパレスチナ人になりきって読み進めていくと深い感動が待っているという名著であります。