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脅威の近未来小説  百年法

 

百年法 (上) (角川文庫)

百年法 (上) (角川文庫)

 

 

不老化措置も生存制限法も現実にはあり得ないことであるが、もしあり得たら、と小説は始まる。
しかし超高齢化社会は現実であり、そんな時代どう生きるかの問いはいま生きる人間のハイデッガー的命題である。
SF世界でさ迷う人々を描いているが、あなたならどうすると真剣に問いかけてくる、そんなおもしろさ。
おわりに紫山のエピソードが出てくるがぞっとした。
絞首刑台のようであり、アウシュビッツ収容所のようでもある。
じつに丁寧に書かれているだけに身に迫ってくる。著者のたぐいまれな筆力ゆえであろう。