浅見光彦アーカイブス(3)赤い雲伝説殺人事件
「ここに来て気付いたのだけれど、いたるところに立つ看板ですね。
推進派と反対派では『原子力発電所』という言葉に対する表現の仕方が違うのですね。
推進派は『原電』といい、反対派は『原発』といっています。」
赤い雲伝説殺人事件 (廣済堂文庫) (2010/03/13) 内田 康夫 商品詳細を見る |
「赤い雲伝説殺人事件」は浅田光彦シリーズの第三作、1983年の発表です。
素人画家・小松美保子の「赤い雲」を買った老人が東京のホテルで殺され、絵が盗まれる。
絵は瀬戸内海の小島「寿島」描いたもの、ところがその島は原発誘致問題に揺れていた。
この「岬の町大網町」と「寿島」のモデルは、原発建設問題で揺れる山口県上関町と祝島である、と作者は言っています。
2013年の現在、上関町は推進に傾いているが、一方の当事者中国電力が福島原発の事故を受けて及び腰となり、建設の目処は立っていません。
30年前の作品でありますが、内田康夫さんの恐るべき慧眼と言わねばならないでしょう。
辛らつな批評家としても有名な吉本隆明さんが「浅田光彦シリーズ」のファンと聞きますが、娯楽としての一読者であるとしても、
好感をもたれるのはこういう作品があるからなのでしょう。