北方謙三「水滸伝」五巻
意外な展開である。
楊志が早々に死ぬ。
「死は誰にもやってくる。晁蓋は、そう思った。
早いか遅いかの違いだけで、人はみな土に還る。
だから、嘆くことはない。
死者のために、生き残った者ができることは、なにもないのだ。
忘れない。ただそれだけいい」
北方水滸伝の魅力は、なんといってもその熱い語り口であろう。
1959年のキューバ革命を意識しながら、ゲバラを晁蓋に、カストロを宋江に模して書き上げた、という。
1960年代後半の全共闘運動に身をおいていた著者のリアルな体験が、異様な熱気を発散させている。
水滸伝から楊令伝へ、そして岳飛伝へと続く大水滸伝は北方謙三さんの青春時代へのオマージュ、
だから熱い、同時代を共に生きた読者の胸に堪える。