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「サラの鍵」フランス現代史として

WOWOWで再放送があります7/21(日)深夜2:10

ときどき襟を正して観なければならない映画に出会うことがある。

「サラの鍵」はそういう映画である。

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第二次大戦中のフランス、ヴィシー政権を最初に批判した映画はあの名画「カサブランカ」である、ただしアメリカ映画であった。

戦時中フランスでフランス人によるユダヤ人迫害の事実を掘り起こしたのは、1978年セルジュ・クラルスフェルトが発表した「フランスから消えたユダヤ人」からである。

さらに小説家パトリック・モディアノは大戦中行方不明となった少女ドラ・ブリュデール探し始めたが、クラルスフェルトの名簿でアウシュビッツに送られて死亡していた事実を「パリの尋ね人」という小説で公表した、1989年のことである。

1995年、「サラの鍵」でも表現されているがシラク大統領がフランス人の手によるユダヤ人迫害を認め謝罪した。

事件から50数年を経ていた。

映画では一時収容施設となったヴェロドローム・ディヴェールを忠実に再現していた。勇気のいる画面作りである。

いわゆるホロコーストものとは違って現代と戦時中を交互に見せる巧みな演出により、嫌悪感のない上質な悲劇に仕上げている。

クリスティン・スコット・トーマスが現代ジャーナリストとして好演。

フランスでは現在ひとつのの文学ジャンルとして定着している。

おすすめはピエール・アスリーヌの「密告」

ひるがえって我が国ではあともう50年は待たなければ、この種の文学は出てこないであろう。