minerva2050 review

ブック、映画、音楽のレビューです。お役に立てば・・・

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

北方謙三「水滸伝」五巻

意外な展開である。 楊志が早々に死ぬ。 まだ宋江も梁山泊に入っていない。 「死は誰にもやってくる。晁蓋は、そう思った。 早いか遅いかの違いだけで、人はみな土に還る。 だから、嘆くことはない。 死者のために、生き残った者ができることは、なにもない…

「サマー・アポカリプス」笠井潔 異端カタリ派の呪いか?

「昨日ジゼールは、黄昏時にモンセギュールの城跡を散歩していた。 観光客の足も途絶えた人気のない石の廃墟に一人いると、 まるで痺れるような畏怖の感覚の海に沈んでいきそうになる。」 南フランスアリエージュ県モンセギュール村、スペイン国境に近い盆地…

厳島千畳閣と安国寺恵瓊

何度も宮島を訪れその時々には千畳閣にも上っているが、たしかにいわれるように未完の大経堂であり、不思議な建物である。 入母屋造りの大伽藍で857畳の畳を敷くことができ千畳敷と呼ばれるほどの経堂なのに、 なぜか壁面はなく、本来の入り口もなく、あるべ…

「バイバイ、エンジェル」(笠井潔)舞台はパリ、矢吹カケルくんが登場

舞台はパリ。 一度でもその街角をそぞろ歩いた人には懐かしいあのパリが舞台のミステリー小説です。 森有正さんが、あるいは辻邦生さんが語るパリもありますが、 笠井潔さんは奥に隠れて見えにくいフランス上流社会のパリをあらわにします。 そこで、 あの鼻…

「哲学者の密室」笠井潔 痛烈なハイデガー批判

笠井潔さんの、10年という時間、2000ページ、まさに渾身の傑作本格ミステリー小説であるが、 残念ながら商業的には成功していない。(もちろん作家にはそんな目論見はない) なぜか。 まず第一に、 ドイツ哲学の巨人ハイデッガーが小説ではマルティン…

「ジェノサイド」高野和明

サイエンスフィクションでこの種の感動を覚えたのは、ずいぶん昔のことのように思い出されます。 およそ50年前、マイケル・クライトンの出世作「アンドロメダ病原体」を読んだあの時の興奮がよみがえりました。 有り得そうで有り得ない、有り得ないようで…