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タルコフスキー私論

タルコフスキー

 

 

 

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アンドレイ・タルコフスキーの映画、ローラーとバイオリンからサクリファイスまで8作品すべて傑作ですが好みが分かれる映画です。(「鏡」をみていませんので7作品の評価)

 

ただ、なかなか映画のなかに入り込めないんです。

 

そこでタルコフスキー作品を観るコツ(そんなにしないと見えないの?)

 

1.能の観劇と思えばいいです。

 

能では、はじめ橋掛かりからゆっくりシテさんが現れますが、これがこれからはじまる劇時間のテンポを示しています。タルコフスキーの映画もはじめに映画全体のテンポを示すなんでもないシーンから始まり、ラストもシテさんが橋掛かりに去るように静かに終わります。(どうぞ退屈されないように、そういうテンポなんです)

 

劇そのものも能のように最小限の象徴的な表現で劇的な意味を表しています。

真剣に目をこらし、耳をそばだてなければ、見えないし聞こえない。

 

それはかすかな画面のゆらめきであったり、かすかな効果音であったり、タルコフスキーがいざなうのです。

 

 

2.ルネ・マグリットのだまし画を観るように

 

           imagesマグリット

 

ルネ・マグリットの画のおもしろさはだまし画のような不思議なざわめきを感じさせるところでしょうが、タルコフスキーの映画もそういうざわめきを感じます。もちろん監督の周到な計算づくで。

 

多くの作品で「空中浮遊」のシーンが出てきます、これなに?と驚かれませんように。

 

 

3.不条理劇です

 

物語はぶつぶつ切れ、劇中の会話は成り立たない。右手に去った人が左手から、一階にいるはずの人が二階にいる。観客の物語の常識を意識的に壊してしまいます。

 

以上のこころの準備で観ますと、これがおもしろい映画なのです、ハマリます。

 

 タルコフスキーの映画私論

I.はじめに

アンドレイ・タルコフスキーは、1932年にソ連のイヴァンノヴォで生まれ、1986年にパリで亡くなった映画監督です。彼は哲学的で実験的な映画作品を手がけ、ソ連の映画産業に大きな影響を与えました。

タルコフスキーの映画は、時間や空間、人間の心理や宗教的なテーマなど、深遠な哲学的なテーマを扱っています。特に、彼の映画には長回しやスローモーションなどの独特の映像技法が多用され、独特な世界観を生み出しています。

彼の代表作には、『アンドレイ・ルブリョフ』(1966)、『ソラリス』(1972)、『鏡』(1975)、『犠牲』(1986)などがあります。彼の映画は、多くの映画監督や映画ファンに影響を与え、今なお高く評価されています。

また、タルコフスキーは映画理論にも熱心であり、自身の映画制作においても、映画とは何かという根本的な問いを探求していました。彼の映画理論は、今日でも多くの映画監督や映画学者によって研究され、評価されています。

タルコフスキーは、映画監督としてだけでなく、映画理論家としても高く評価されています。彼の映画理論は、映画制作に携わる人々や映画愛好家にとって非常に重要なものであり、学ぶべき価値があります。

彼の映画理論は、映画を単なるエンターテインメントや娯楽の一種として捉えるのではなく、映画が人間の心理や存在意義、社会的な問題などを探究するための深遠な表現手段であると考えることを提唱しています。彼は映画を芸術として位置付け、映画には作者の思想や感情、哲学的な問いかけが表現されるべきだと主張しています。

そのため、彼の映画理論を学ぶことは、映画制作に携わる人々がより深い映画表現を追求し、芸術性の高い作品を生み出すために必要不可欠なものです。また、映画愛好家にとっても、彼の映画理論を学ぶことは、映画の鑑賞をより深め、より豊かな映画体験を得るための手がかりとなります。

さらに、現代の映画制作や映画理論においても、タルコフスキーの影響は大きく、彼の映画理論を学ぶことは、映画界における文化的な知識としても重要です。

Ⅱ.映画の性質に関するタルコフスキーの見解

  • タルコフスキーの時間の概念とそれが彼の映画製作に与える影響
  • タルコフスキーの映画において、時間は非常に重要なテーマのひとつです。彼は、時間を単なる継続する流れではなく、人間の内面的な体験として表現することを目指していました。

    彼の映画では、時間が静止する瞬間や、過去と現在が混ざり合う瞬間が頻繁に描かれています。また、時間の流れが不可逆的であるという概念にも疑問を投げかけ、過去や未来が現在に影響を与えることを表現しています。

    彼の時間の概念は、彼の映画製作に大きな影響を与えています。彼は、映像や音響を繰り返し使うことで、時間の断片を表現し、時間の流れをリズミカルに表現する手法を用いていますまた、彼は自然との対話を重視し、時間を自然と調和させることで、映画の時間の内面的な体験として捉えられるようにしています。

    その結果、彼の映画は、時間の流れや時間の滞りを感じさせる独特な雰囲気を持っていて、観る人々に強い印象を与えています。また、彼の時間の概念は、映画制作においても大きな影響を与えており、彼の手法やアイデアは多くの映画製作者によって継承され、発展しています。

  • 映画というメディアの意義と現実を捉える役割

III. 映画形式へのタルコフスキーのアプローチ

  • タルコフスキーのロングテイクとスローペースの使用

    ロングテイクとは、ひとつのシーンを長いカットで表現する手法であり、スローペースとは、物語の進行をゆっくりと描く手法のことです。 。

    タルコフスキーは、この手法を使うことで、物語の緊張感や感情の深みを表現し、観客に内面的な体験を与えることを目指しました。子供の頃を回想するシーンで、ロングテイクとスローペースが用いられています。彼の内面を観客に伝えます。

    また、タルコフスキーは、ロングテイクとスローペースを用いることで、映像の美しさや存在感を表現することにも力を入れました。 例えば、彼の作品『アンドレイ・ルブリョフ』では、中世ロシアを舞台にに、美しい風景や役者たちの表情を、ゆっくりと描写することで、映像の存在感を強めています。

    これらの手法は、映画製作においても大きな影響を与え、多くの映画製作者によって継承され、発展しています。

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  • 彼の映画における音と音楽の重要性
  • タルコフスキーの映画における視覚的象徴と比喩の役割

IV. タルコフスキーの人間の精神性の探求