minerva2050 review

ブック、映画、音楽のレビューです。お役に立てば・・・

2016-01-01から1年間の記事一覧

「25年目の弦楽四重奏」&「持ち重りする薔薇の花」

もし人生がもう一つあったら何をしたいかと質問されて、 「第二の人生では心理学者になって、なぜクヮルテットの四人の仲がぎくしゃくするのか研究したい」 と答えたくらいなのに、演奏となるとじつにいいアンサンブルでじっくり聴かせる、 「持ち重りする薔…

武原はん 日本舞踊のゆくえ(その1)

NHK教育でひさしぶりに武原はんの舞踊を観た。 さて、わたしは「日本舞踊のゆくえ」と題して日本舞踊について書こうとしているが、日舞に関する資料はあまりに少ない。(家元制による身体伝承の技によるのだろう) そこで「武原はん」さんと「井上八千代」さ…

30STM ジャレット・レト監督ドキュメンタリー「ARTIFACT」

2008年夏、新たな創作の場を求めて動き始めた サーティセカンズ・トゥ・マースは 所属レコード会社EMIから契約不履行で提訴された。 訴訟額3000万ドル、30STMに30ミリオン だが彼らは屈することなく新譜の政策に着手 中心人物ジャレット・…

「永遠のマリア・カラス」

地方に住んでいますとなにせ会場が遠いのと、オペラ公演を観にけるほど経済的余裕はありません(こっちが本音か)ので、 どうしても映画館でのライブビューイングかテレビ放送で楽しむことになります。 それにしても最近震えるほどの感動を受ける舞台に接し…

「磁力と重力の発見」山本義隆

最近の理科系を目指す大学生、高校生、あるいは予備校生にそのこころざしの動機を尋ねると、 山本義隆さんの「磁力と重力の発見」を読んで物理学や数学の面白さを知ったから、と答える者が何人かいた。 驚くと同時に深い感銘を受けた。 「へえ~まるで現代の…

映画「レヴェナント」タルコフスキーへのオマージュ

レヴェナント:蘇えりし者(2枚組)[4K ULTRA HD + Blu-ray] 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 発売日: 2016/08/24 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る アカデミー主演男優賞受賞、アカデミー監督賞の2年…

「ナイトマネージャー」BBCドラマ化への期待

ル・カレのスパイ小説、『ナイト・マネジャー』がBBCでドラマ化されました。 アマゾンプライムビデオで全8話が視聴できます。 巨匠ル・カレの作品の多くは最高のスタッフ、俳優で映画化されそれぞれ傑作と評判は高い。 寒い国から帰ったスパイ(1965年) ロ…

EU離脱を考える「ヘーゲルから考える私たちの居場所」山内廣隆

「ヘーゲルのカント的国家連合批判」 2016年6月24日この書評を書いている。 おりしも今日、イギリス国民がEU離脱を選択した歴史的な日となった。 .イギリス国民がEU離脱を選択した理由は総じていえば「主権」の回復を求めたということであろう。 それはまさ…

「藤沢周平」を読む(その1)

愛憎の檻 -獄医立花登手控え NHK連続ドラマで放映中 >藤沢周平さんの小説はかなり読んでいたつもりが調べてみると、まだ半分にも満たないのものでありました。(下の作品集のうち明るいブルーラインが読了) ただ年月だけはかけていますからよき読者の一人で…

書評「冷血」上・下 高村薫

合田が帰ってきた。 高村節のリズム感が戻ってくるのは事件現場に合田が到着してからである。 現場検証、捜査会議の詳細を極めるリアリティ表現はさすがの高村さん。 ただ事件はありふれた強盗殺人事件、犯人逮捕もあっけない。 あえてシンプルな舞台設定に…

映画「黄金を抱いて跳べ」井筒監督入魂の一作

高村薫の原作、こんなハードボイルド小説が女性作家に書けるか、高村薫は男だろう?と話題を呼んだデビュー作でした。 その映画化、井筒監督入魂の一作です。 キャスティングがいい、西田敏行さんのジイちゃん役をのぞいて。 モモ役のチャンミンが役得。 幸…

高村薫を読む、「レディジョーカー」

レディ・ジョーカー〈上〉(1997/12/01)高村 薫商品詳細を見る 高村薫さんの傑作ミステリー「レディジョーカー」がテレビドラマ化され第一回をみました、秀作です。 同原作は2004年に日活で渡哲也さんらにより一度映画化されています。 なかなかの力作で…

映画「奇跡の2000マイル(原題 TRACKS)」セミドキュメンタリーの秀作

アリススプリングス、オーストラリアの地図を開くとど真ん中にある小さな町。そこから砂漠を横断してインド洋まで歩いて女一人旅をしようという無謀な計画を実現した24歳のロビン・デヴィッドソンの実録をセミドキュメンタリーで撮った秀作。 1.なにより主…

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕やはり読みづらい翻訳

ル・カレの著作を流麗に翻訳されてきた村上博基さんの訳。 どうしちゃったんだろう、ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕はやはり読みづらい。 映画「裏切りのサーカス」の公開に合わせて大急ぎのやっつけ仕事だったんでしょうか。 多くの人…

映画感想「裏切りのサーカス」

ル・カレのスパイ小説、『ナイト・マネジャー』がBBCでドラマ化されるらしい。 その前に、ル・カレの傑作映画を観るのも悪くない。 ひさしぶり、大人のための傑作ミステリー映画である。 原作はジョン・ルカレの「Tinker Tailor Soldier Spy」 読んだのはも…

建築家リカルド・ボフィルについて(建築家シリーズ1)

1990年、わたしはフランスパリ、スペインバルセロナ、フランスモンペリエを旅行しました。 ただただ建築家リカルド・ボフィル(Ricardo Bofill)の設計の建造物を訪ね歩くという贅沢な旅でありました。 リカルド・ボフィル、現在ではあまり知られない建…

「水滸伝」19巻 完結編 なるほどだから面白い

「水滸伝」19巻 完結編 なるほどだから面白い北方水滸伝。 講談本では梁山泊に最後まで生き残るはずの楊志が北方版では第五巻で早々に死んでしまった、どうして? その後延々と続く楊令の成長物語はなぜ? 17巻から突然登場する女真族、どうして? 多く…

『バードマン』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督

ブロードウェーの不思議のひとつに、 公演初日のニューヨークタイムスの批評次第で、ロングランあるいは一週間で打ち切りが決まる、という理不尽なルールがある。 何か月、何億の経費をかけて準備をしていようとダメはダメ。 この理不尽なルールにもの申した…

『Mr. Robot』(ミスター・ロボット)Amazonビデオの傑作海外ドラマ

うーん、やっぱりドラマ化されたか、という第一印象ですが、いかにもアマゾン独占配信らしい知的ドラマです。 昼はコンピュータセキュリティーの専門家、夜は天才ハッカーとして悪徳企業をやっつけてしまうという現代の必殺仕事人のドラマ、おもしろい、必見…

Vフォー・ヴェンデッタ(映画)マトリックスより笑える

ハッキンググループのアノニマスの仮面として有名になったガイフォークスマスク。 そもそも事の起こりはこの映画「Vフォー・ヴェンデッタ」から。 何かと世間を騒がすウォシャウスキー姉弟のおバカないたずらなのか、まっとうな映画なのか、 ただ小道具のは…

「十二国記」新作は直木賞を受賞する

いわば東洋の「指輪物語」、きっと永く読み継がれる名作なので、 新作に直木賞くらいあげておかないと、将来、直木賞選考委員の人たちはきっと恥ずかしい目に合うでしょう。 いまは奇書、あすは名著 食わず嫌いという言葉があります。読書ではさしずめ嫌いな…

ピリオダイゼーションという戦略(チェルシー監督モウリーニョ)2015年プレミアリーグ優勝

2015年プレミアリーグ優勝はチェルシー、さっそく2016年も連覇すると宣言。 監督はジョゼ・モウリーニョ。 「私は特別な存在(Special One)だ」というセリフは有名だが、たしかにプレミアリーグ、セリエA、リーガ・エスパニョーラとヨーロッパ三大大…

映画「インターステラ」傑作SF

はじめの15分はほとんどオカルト映画かと見まがう。 娘の部屋の本棚から勝手に本が落ちる、砂が積もる。 農場では野菜が枯れる、砂嵐がやって来る。 どうなるのこの映画は、オカルトはごめんだと思いつつ。 親子が不思議な基地を訪ねたところから本格的なS…