minerva2050 review

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天使たちの探偵 短編集も傑作です

短編集も傑作です

天使たちの探偵

雑誌ミステリーマガジンに連載された短編5編、書きおろしの中編1篇の構成ですが、
さすが原りょうさん、うまいですね。お勧めします。

とくに「子供を失った男」はシリーズの中でも最高傑作といえるでしょう。
主人公がクリーブランドオーケストラの常任指揮者という設定もかつてのジョージセルを思わせて
いぶし銀を感じる。

もっとも脂の乗り切った時期の著者の連作、短編といえどもあえて読む価値があります。

狼花 新宿鮫9

新宿鮫シリーズの最高傑作!

狼花 新宿鮫9~新装版~ (光文社文庫)

人気が陰り気味だったシリーズの起死回生作。
著者渾身の力を込めた大長編、傑作です。
香田との勝負、ヒロイン明蘭の行く末、謎の男深見とは、息もつかせぬ展開。
日本冒険小説協会大賞受賞も納得。
大沢在昌の最高傑作になるかもしれない。

狼花 新宿鮫9

新宿鮫シリーズの最高傑作!

狼花 新宿鮫9~新装版~ (光文社文庫)

人気が陰り気味だったシリーズの起死回生作。
著者渾身の力を込めた大長編、傑作です。
香田との勝負、ヒロイン明蘭の行く末、謎の男深見とは、息もつかせぬ展開。
日本冒険小説協会大賞受賞も納得。
大沢在昌の最高傑作になるかもしれない。

中国全体主義の怖さに世界が震える映画

一人っ子の国 (字幕版) (原題 - One Child Nation)

日本、アメリカ、ヨーロッパ、世界中の人が観るべきドキュメンタリー。おそらく今年のアカデミー賞にノミネートされるでしょう。
全体主義の怖さ、1万人の子を殺して国家主席に表彰され悪びれることのなく自慢する産婆さん。二人目の子は捨てられるか、売られるか、殺されるか、仕方ないです、上からの命令ですから、たしかに。
政策に反対する家は屋根をはぎ取る、なるほど効率的な罰しかた。
これが一地方の話、おそらく中国全土では何千万人の女性が強制的に不妊治療されていた「一人っ子政策」の実態を暴いています。

怖いのは、今日でも、党中央の政策となれば香港中の民間人を殺しても悪びれることはない国である、と見えます。
かたちは違っても全体主義の本質は北朝鮮と同じだと教えられる、じつに勉強になる映画でした。

この映画が世界中で評判になればなるほど監督さんは中国には帰れないでしょうし、ご家族の安否が気になります。

「十二国記」新作

白銀の墟 玄の月 十二国記 1-4巻セット

 

いわば東洋の「指輪物語」、きっと永く読み継がれる名作なので、

新作に直木賞くらいあげておかないと、将来、直木賞選考委員の人たちはきっと恥ずかしい目に合うでしょう。

いまは奇書、あすは名著

食わず嫌いという言葉があります。読書ではさしずめ嫌いなジャンルということでしょう。

若い女性向けのホワイトハート文庫、ましてファンタジーとなればまず本屋で手に取ることはありません。

しかしそれでも是非にと勧める人があり、勧められるままに読み始めた「十二国記」でしたが。

これが美味い、じつに美味い、あらためて食わず嫌いは良くないことだと思い知りました。

本筋の四巻をいっきに読み終わり、ため息ひとつついて、不思議な勧興を覚えました。

レミゼラブルのコゼットの物語のようでもあるし、ブロンテの嵐が丘のようでもある、

いやメルビルの白鯨の味わいでもあり、いや果てはセルバンテスのドン・キホーテの滋味かと。

ともあれ古今の名著が思い浮かぶということは「十二国記」は意外にも大変な傑作なのではないか、と。

「いまは奇書、あすは名著」の例にならうのではないでしょうか。

文学上の特徴

物語は省略しますが、いわゆる貴種流離譚の神話形式をとっています。

神話世界のリアリティを支えているのが中国史史記」五帝本紀、夏本紀、殷本紀、周本紀あるいは「書経」。

著者小野不由美さんの書誌学の教養は相当なもので、ある執念さえ感じさせます。

東洋史碩学内藤湖南」漢字研究の「白川静」の系譜、京都学派につながる人ではないでしょうか。

小説「十二国記」はさしずめ「和漢朗詠集」現代版といえるかもしれません。

大きな特徴は漢字の多用、漢文読み下しの文章にありますが、

その美しさと軽快なリズムから、あらためて日本語見直しの機会になるかもしれません。

それはおそるべき出来事です。

ユング心理学の影響

著者は「あえてモデルといえば若い女性の読者」と語っています。

そのやさしさは、

陽子、祥夐、鈴を通じて若い読者との対話をもっとも大切にしているとのテーマの核心でしょう。

アニメ版では仮面をつけた猿が象徴的に登場します。

もちろん本文でも主人公の心理描写としての猿は出てきます。

アニメ版では少し直接的過ぎますが、

仮面「ペルソナ」と魂「ソウル」の葛藤表現は、ユング心理学を援用しているとの表現でしょう。

そもそも「十二国記」の神話的世界はユングのゆめ世界そのものなのかもしれません。

経験からうまれるリアリズム

若い女性向けのホワイトハート文庫、ましてファンタジー、確かに夢のようなふわふわした話です。

しかし差し込まれている具体的な出来事は深刻な今日的な事件の連続です。

それらは、おそらく著者の具体的な経験に基づくものでしょう。

祥夐、鈴の貧困の苦しさは、著者の困窮生活の実際の経験でしょうし、

陽子の哲学的「意志」の発見は、著者自身の精神的葛藤からの発見でしょう。

著者小野不由美さんは特異な人生経験の自信から、現代に対決しているようにみえます。

経験からうまれるリアリズムの強さが

 

を名作足らしめていると言えるでしょう。

いまいちど、いまは奇書、あすは名著。

近未来の警察小説、おもしろかった 

機龍警察〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

SFというより近未来を借りた警察小説、ハードボイルド小説として読ませる、という感じです。
現代の警察小説では制約が多くて飛び越えられないことをすっ飛ばすという快感があります。
姿、ユーリ、ライザのキャラクター設定がうまい、彼らは窮地でどうなるのかと気をもませる展開。

ロボットや兵器に横文字が並ぶのでテキストはあったほうがいいでしょう。
私のテキストは旧版なので完全版との違いもおもしろかった、といってもほとんど言い回しを変える程度、編集者が手直しして完全版と称した、なるほどプロはこう直すのかと感心。

気になる人物は宮近。
キーワードは「きもの」

 数字60でイメージできるものは?

60 誤判対策室 (講談社文庫)

 

数字60でイメージできるものは?例えば定年60歳・・・
著者は何をイメージしてこの小説を書き始めたのだろうか。

刑事有馬、検察官春名、弁護士世良のキャラ立てがうまい。
はじめは穏やかな展開だが段々熱を帯び、終いにはそれぞれ職を賭しての戦いとなり息をのむ。

著者は現在の司法制度に対する強烈なアンチテーゼをじわりじわりと語り始める。

読み始めると止まらない一気読みしかないだろう。
絶対絶命の窮地でこう来るか、その手があるか。

刑事裁判の進め方のお勉強にもなるが、お勉強よりとにかくおもしろい。

気になる人は「綾子さん」
キーワードは「死刑」