minerva2050 review

ブック、映画、音楽のレビューです。お役に立てば・・・

2014-01-01から1年間の記事一覧

凍氷 ジェイムズ・トンプソン

凍氷 (集英社文庫)(2014/02/20)ジェイムズ・トンプソン商品詳細を見る 極夜 カーモスの続編です。舞台はヘルシンキ、マイナス10度と暖かくなりました。 妻ケイトの希望通りヘルシンキへ移動となったカリ・ヴァーラ警部は猟奇的殺人事件の捜査、加えて第二…

もっと自由に、 ピナ・バウシュ生きるヒント

NHK BS12月25日深夜0時45分から放映されます 2012年から全国で巡回上映されているドキュメンタリー映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』が大きな反響を呼んでいます。 映像化したのは同じドイツの映画監督というより映像作家として有名なヴェ…

極夜(カーモス)ジェイムス・トンプソン

極夜 カーモス (集英社文庫)(2013/02/20)ジェイムズ・トンプソン商品詳細を見る フィンランド発のミステリー、それも極北ラップランド。 「ポーチのかかっている温度計はマイナス三十二度。暖かくなってきた。」 これは寒い。 「ストロベリーナイト」誉田さ…

「タンゴステップ」ヘニング・マンケル

タンゴステップ〈上〉 (創元推理文庫)(2008/05/23)ヘニング マンケル商品詳細を見る 文庫本上下巻の大部をわずか4日で読み切りました、というより読まされました。 スウェーデンのミステリー作家ヘニング・マンケルの傑作です。 プロローグ、舞台は1945…

北欧ミステリーを読む

靄の旋律 国家刑事警察 特別捜査班 (集英社文庫)(2012/09/20)アルネ・ダール商品詳細を見る 「靄の旋律」アルネ・ダール やはりスウェーデンのミステリー、原作を読んでいないがTVドラマでの仕上がりをみると傑作。 「スウェーデン実業界の大物が連続して…

心理学的にありえない

心理学的にありえない 上(2011/09/13)アダム・ファウアー商品詳細を見るヒット作「数学的にありえない」の著者による第二弾。 気をひかれる巧みな表題ですが心理学とは関係ありません。あえていえばSFファンタジー小説、好みが分かれます。 筒井康隆さんの七…

映画「夜叉」

夜叉【Blu-ray】(2012/08/22)高倉健、田中裕子 他商品詳細を見る 映画だけ観てくれ、と私生活を全く見せなかった映画俳優は「渥美清」と「高倉健」だけでしょう。 ふつう世間に顔をさらしてなんぼのお仕事でしょうから、相当きつい生き方やと思いますが大し…

「意志と表象としての世界」ショーペンハウアーを読む(1)

ショーペンハウアーさんがひどく変わったおもしろいオジサンであることはすでに述べましたが、 その代表作「意志と表象としての世界」もまたじつに愉快な哲学書ではあります。 まずは、その序文、読者にこの本を読むにあたっての心得といいますか次のような…

映画感想「ミッドナイトインパリ」

どうもご当地映画『それでも恋するバルセロナ』が当たって味をしめたウディ・アレン。 バルセロナからロンドンへそして本作「パリ」へ、次回作はローマだという。 思い出せば人気を決定付けた『アニー・ホール』や『マンハッタン』もシャレたニューヨークの…

「海と三つの短編」立原正秋アーカイブス(2)

立原正秋さんは両刀遣い、つまり純文学と大衆小説を意識的かつ挑戦的に使い分けた作家である。 氏が流行作家として世に受け入れられた大衆小説の話題には事欠かないが、 もういっぽうの純文学世界はどうであったろうか。 わたしはもっとも美しい純文学作品と…

「残りの雪」立原正秋アーカイブス(1)

残りの雪 (新潮文庫)(1980/07/29)立原 正秋商品詳細を見る 立原正秋さんの代表作といえば「春の鐘」か「残りの雪」ということになりましょうか。 いずれも発表当時話題を呼んだ日経新聞の連載小説ですが、今日の渡辺淳一さんの恋愛小説のさきがけ、今風に言…

「嵐が丘」エミリー・ブロンテ 奇跡の作家

嵐が丘 [DVD] FRT-007(2006/12/14)ローレンス・オリビエ、デヴィッド・ニーヴン 他商品詳細を見る ふつうイギリス文学史を俯瞰すれば三巨人としてチョウサー、シェークスピア、ディケンズをあげる人が多い。 しかし一般読者としてはイギリス文学といえばエミ…

井上八千代 日本舞踊のゆくえ(その2)

京都へ遊びに行けば、祇園のお茶屋へあがって京懐石を楽しむことはあっても、舞妓さんをよんで遊ぶマネは出来ない。そこで都おどりの時期に観劇に行くことになる。 その都おどり、舞妓さんの京舞を取り仕切っているのが「井上流」である。 「井上流」は初世…

イタリアオペラを愉しむ(その1)椿姫

ありがたいことに、最近はMET(メトロポリタンオペラライブビューイング)でオペラを臨場感そのままに愉しむことができるようになりました。 高価なLDやDVDを買わなくても、ハイビジョン画質、5.1チャンネル音質で茶の間で楽しめます。 ゴルフのテ…

Remember "Imagine"

もう忘れられた広告でしょうか? あの9.11の2週間後 2001年9月23日「ニューヨークタイムズ」 たった1行の全面広告。 Imagine all the people living life in peace そして、いま再び IMAGINE Imagine ther…

数学的にありえない(小説)アダム・ファウアー

数学的にありえない〈上〉 (文春文庫)(2009/08/04)アダム ファウアー商品詳細を見る 本の虫故児玉清さん絶賛「かつてない超のつく面白さに僕は悶絶した」といわれても、ねー。 かの筒井康隆さんの名作「時をかける少女」のいわばアメリカ版。 主人公はいたい…

ノーベル賞(その1 利根川進) 「免疫の意味論」から

「抗体という分子は、抗原が入ってくるとそれに対応した立体構造を持つタンパク質として合成される。 抗原という鍵に対して、抗体という鍵穴が作り出されるなどとは教科書ではあっさり述べられているが、 それは遺伝学的にもタンパク質化学からも驚天動地の…

リリー・クラウスのモーツァルト

モーツァルト聴きはやっぱりオペラがいいという人、河上徹太郎。やっぱり交響曲がいいという人、小林秀雄。 好みはいろいろ、ざっと平均に直すとピアノ協奏曲がいい、という人が多い、わたしもその一人。 ではだれの演奏がいいの?となるとこれも好み。 天真…

音楽の友その2「シューマンの指」から

「シューマンの過酷な運命は知る人ぞ知る、自殺もやむをえない」と書いたが、 ロベルト・シューマンは1856年7月29日午後4時、死亡した。 自殺といえるかどうか、病死というのが正しいかもしれない、拒食による餓死を自ら選択できるだろうか。 では死…

回顧 井上ひさし

近松門左衛門以来の天才戯作者、小説家井上ひさしさんを回顧しておこう。 戯曲家井上ひさし 観た舞台は「日本人のへそ」「道元の冒険」「泣き虫なまいき石川啄木」「組曲虐殺」くらい。笑い転げて、石原さとみさんがうまいな~という印象。みんなとにかく早…

アナトリー・ヴェデルニコフ 奇跡のピアニスト(その3)

ロシア・ピアニズム名盤選28 ヴェデルニコフ/20世紀ロシアの作品(2005/05/25)ベデルニコフ(アナトリー)商品詳細を見る 日本人がよく知るロシアのピアニストといえばリヒテルとギレリスであろう。 そのリヒテルが西側記者団に「国には自分よりすごいピアニス…

マリア・ユーディナ 奇跡のピアニスト(その2)

すこし昔、友人Hが新しいステレオを買ったので聴きにこないか、と誘った。 彼の部屋に入ると机の上に大きめのラジカセが置いてある。 「これを買ったんだ」とうれしそうに言う。 友人Hはクラッシックファン、とくにジョージ・セル指揮のクリーブランドオー…

漱石はブックリーダーで読む

最近漱石の「門」の欠落していた原稿の一部が見つかったらしい。 だからといってなんの発見もなかったのだ。 「門」はわたしにとって漱石作品のなかではいちばんのお気に入りなのだ。だからちょっと気になった。 漱石は岩波の全集で読むべし、とのご宣託もあ…

奇跡のピアニスト

ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフ、文芸の世界で圧倒する芸術家はロシアに多いが、 そのほかの芸術分野、例えば映画、バレエなどでも優秀な芸術家が輩出している。 それは世界の七不思議のひとつと言っていい。 例えばバレエ、いわゆるクラッシック…

ヨシフ・ブロツキー ヴェネチア その1)

ヴェネツィア 水の迷宮の夢(1996/01/17)ヨシフ・ブロツキー商品詳細を見る ヴィスコンティの映画「ベニスに死す」に触発されて、ヴェネチアにかかわるさまざまなイメージを思い出している。 この町の美しさ、すぐにヨシフ・ブロツキイの短編小説「ウォーター…

笑うショーペンハウアー (その2)

随感録(1998/10)A. ショーペンハウアー商品詳細を見る デカンショ節というのがありますね。 ♪デカンショデカンショで半年暮らす あとの半年寝て暮らす 言うまでもなくデカルト、カント、ショーペンハウアーをもじった寮歌ですが、 哲学の系譜でならデカルト…

「アナと雪の女王」そのディズニーマジック

ディズニープロ思惑どおりの大ヒット、そのディズニーマジックとは? 1.あえて70%の出来 いろんな人のレヴューをみてみると、「お話がいまひとつ、キャラクターがいまいち。」 という意見が結構ありますが、大満足ではなく、ちょっと満足、を狙うのがデ…

Dの挑戦 ドストエフスキーの方法

「悪霊」 「ニコライ・スタヴローギンは事実、部屋の中にはいっていた。彼はごく静かに部屋にはいってくると、一瞬戸口で立ちどまり、もの静かな眼差しで一座をみわたした。」 やっと出てきたか、と言いたいけど、スタヴローギンの登場で物語は動き出す。 さ…

「推定無罪」から23年後の続編「無罪」スコット・トゥロー

スコット・トゥローのベストセラー小説というより、 1990年公開の映画「推定無罪」の続編といったほうがわかりやすいでしょう。 法廷ミステリー映画としてはおそらく名作「情婦」につぐ傑作映画でした。 推定無罪 [DVD](2000/04/21)ハリソン・フォード、…

「ハウスオブカード」

監督デビッド・フィンチャー、ケヴィン・スペイシー主演の政治ドラマ、 アメリカでの大ヒットがうなずける傑作TVドラマに仕上がっている。 日本での評判はまだ聞かないが、おそらくNHKが食指をのばすであろうから、来年くらいにはブレイクするだろう。 なる…