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泉美術館「広島-対馬」展

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そっと日本地図を180度回転させてみると、対馬は中国、韓国からみれば日本の玄関口となる。

当たり前の話だが、それははるか遠い昔からそうだ。

例えば、紀元前219年、徐福が秦の始皇帝から依頼されて不老不死の薬を求めて舟を漕ぎ出したときもそうだったろうし、

あるいは遣隋使、遣唐使の時代もそうだ。対馬はいまよりもっとにぎやかな島であったろう。

いっぽう、元寇の時代、対馬は第二次大戦終戦時の沖縄よりも悲惨な経験をしている。

神風が元寇日本襲来を防いだというが、そのとき対馬が元軍に蹂躙されていたことは多く語られていない。

対馬がおだやかな島になったのは江戸期、朝鮮通信使の交流が始まってからではないだろうか。

伊東敏光さんの廃材と漂流物を積み上げた「飛行景」には、

以外にも、幾重にも重なる日本史の漂流物とその堆積を表現しており、おもわず息をのんだ。

対馬 伊東敏光

常設会場には、香月泰男シベリア抑留で見たであろう「菫」という傑作が展示してあり、

「広島-対馬」展に「希望」という花を添えていた。

* * *

梅原龍三郎86歳の薔薇図に見惚れた。

往年の力強い真紅の薔薇ではない、やわらかなピンク色である。

マネ晩年の「睡蓮」あるいは老いたゴヤの「ミルク売りの少女」に似たさわやかさがある。

達観の境地というのだろうか、神仙世界の住人というのだろうか、

きょうはいいものを観させていただいた。