2015-08-22から1日間の記事一覧
話は、人買いにさらわれる少女を自然居士が琵琶湖畔まで追っていき、人買いの云う舞を舞え、簓をすれ、鞨鼓を踊れと無理難題に応えて、無事少女を解放するという、宗教家の有り様を問う問題作です。 説法を旨とする宗教家に辱めのため遊芸をさせて笑おうとい…
ロラン・バルトが日本を『表徴の国』と評したのは1970年であったが、西洋人が邦楽を野蛮な「雑音」と捉えなくなったのはごく最近のことである。 雅楽を観る機会はよほどのことがないと体験できない。 安芸の宮島では雅楽舞台で年に2,3度あるが、神官によ…
「やまと歌は人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれるける。世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心に思ふことを、見るもの、聞くものにつけて、言い出だせるなり」 あまりにも有名な紀貫之の仮名序の書き出しです。 とにかく「古今和歌集」「源氏…
「松風」は観阿弥の作といわれています。 「松風、村雨昔汐汲みなり」との記録もあり、「汐汲み」をもとに観阿弥・世阿弥が改作を重ねたのだと思います。 卑しい汐汲み女の姉妹、美しく清らかでひたむきな在原行平との恋が、松風の吹く須磨の浦で語られます…
「日本舞踊のゆくえ 5」では、坂東玉三郎さんの「京鹿子娘道成寺」を通じて歌舞伎舞踊の楽しさを話します。長文になりますがご辛抱ください。 坂東玉三郎舞踊集1 京鹿子娘道成寺 [DVD](2003/01/25)Windows商品詳細を見る 坂東玉三郎 2013年正月おトソ気…
さて、中沢新一さんの直覚、わが国における仏教思想の頂点が後にも先にも空海の真言密教であることは疑う余地のないことでありますが、 先だって山岳宗教者としての空海の謎に「虚空蔵菩薩求聞持法」の実践という逸話があります。 辞書によれば、こくうぞう…
雪片曲線論 (中公文庫)(1988/07)中沢 新一商品詳細を見る 「空海にはたくさんの顔がある。 密教の思想家としての空海がいたかと思うと、 能書家にして名文家のアーティストとしての空海がいる。 昔ながらの山岳宗教者として深山に踏み込んでいく空海の中には…
銀閣寺東求堂「同仁斎の間 「だいたい今日の日本を知るために日本の歴史を研究するには、古代の歴史を研究する必要はほとんどありませぬ。 応仁の乱以後の歴史を知っておったらそれでたくさんです。 それ以前のことは外国の歴史とおなじくらいにしか感ぜられ…
国を癒やす「能」 迷路〈上〉 (ワイド版岩波文庫)(2006/11/16)野上 弥生子商品詳細を見る 「迷路」野上弥生子は戦争文学の傑作といわれますが、主人公ははたして菅野省三だったのでしょうか。 その長い物語の幕切れは 「とみはなにもいう暇がなかった。ふた…
古代アテネでは、ギリシャ悲劇の上演が医療施設で実施され治療に効果が上がっていたということは史実として記録にあります。 一方、能の発祥は足利義満の時代、娯楽として猿楽から様式化したことに始まります。 その時代や経緯は違うのですが、世阿弥の目指…