minerva2050 review

ブック、映画、音楽のレビューです。お役に立てば・・・

2013-01-01から1年間の記事一覧

「良心の美術館」泉美術館(3) ある風景のはなし展

ここではロラン・バルトのこんな言葉がふさわしいでしょう。 「あらゆるイメージは多義的である。 それはそのシニフィアンの下方にあってシニフィエという《揺れ動く鎖》を内包しており、 イメージを読み取る者がそのうちのあるものを選び他のものには無知で…

「パレーズ・エンド」ベネディクト・カンバーバッチの戦争と平和

WOWOWで7月9日再放送。 いわば「戦争と平和」の英国版、時代は1910年代、第一次世界大戦のころのお話。 たとえれば「戦争と平和」のピエールがクリストファー・ティージェンス、ベネディクト・カンバーバッチが演じている。 ナターシャがヴァレンタイ…

映画「ミュンヘン」モサドについて考える

数あるスティーヴン・スピルバーグ監督の作品のなか最高傑作と呼んでいい。 物語は1972年のミュンヘンオリンピック事件と、その後のイスラエル諜報特務庁(モサッド)による黒い九月に対する報復作戦を描く。ジョージ・ジョナスによるノンフィクション小説『…

「項羽と劉邦」の楽しみ(8)李斯の死

WOWOW 毎週土曜午前9:00(2話ずつ放送) 前207年、李斯は趙高の計略にかかり咸陽の市で腰斬の刑に処されました。 歴史上、丞相李斯の重き罪は 1.「焚書坑儒」の上申 2.「郡県制」の上申 3.始皇帝遺言書の偽造 といわれますが、 法家の李斯ならば「…

映画「キリングショット」新人監督アーロン・ハーヴェイへの期待

『キリング・ショット』(原題 :Catch.44)はグロテスクで不条理なB級映画です。 では観なければいいのですが、観て記憶に残しておいたほうがいいかもしれません。 それは新人監督アーロン・ハーヴェイがアメリカ映画ではめずらしいアート系こだわり監督の…

「市塵」にみる儒家思想

藤沢周平さんの時代小説にいわゆる「史伝もの」というジャンルがあります、あまり多くはないのですが。 たとえば「一茶」たとえば「漆の実のみのる国 」たとえば「白き瓶」そして本作「市塵」 ただ、それらは稀代の名文家とよばれた先生にして必ずしも成功し…

映画「アイランド」

アイランド 特別版 [DVD](2010/04/21)ユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンソン 他商品詳細を見る マイケル・ベイ監督のSFアクション。 30分、医療塔から脱出して、ロスへ向かうまでちょっと辛抱しよう。 待っているとSF映画の金字塔「ブレイドラン…

映画「デンジャラスラン」

『デンジャラス・ラン』原題は「 Safe House」原題も邦題も話がよく見えない、だからおもしろいのかとにかく目が離せない。 まずデヴィッド・グッゲンハイムの脚本が凝っている。 フレデリック・フォーサイスのスパイ小説を彷彿とさせる展開、ラストはどこに…

キックアス2がいよいよ、というか、やっと2013年夏休みに公開

キックアス2がいよいよ、というか、やっと2013年夏休みに公開されることになったようだ。 この映画の魅力はヒットガールの クロエ・グレース・モレッツのかわいらしさがすべて。 女の子の成長は早い、あれから3年たっている、クロエ大丈夫なんだろうか…

映画「ミラノ、愛に生きる」

とりためたビデオの整理中にたまたま観た映画に驚愕しました。 こういう体験があるから映画は愉しい。 ヴィスコンティの再来かと思わせる演出とカメラワーク。 イタリアでしかできない新しい感性の映画、ほぼ完璧な芸術映画だと断言できます。 味覚という感…

「インビジブルレイン」姫川玲子シリーズ第4作

「姉さんは、知らないだろうけど。 あの夜も、ちょうどこんな感じの雨が、降っていたんだよ。」 こうはじまる誉田哲也さんの空前ヒットのエンターテイメント小説。 姫川玲子シリーズ第4作、有名になりすぎたキャラたちの扱いに間違いは許されない、さすがに…

「ストロベリーナイト」フジテレビの大ヒット作

「世界を灰色に染める、腐った雨が降っていた。」 誉田哲也さんをメジャー作家に押し上げた「姫川玲子シリーズ」はこう書き出してはじまりました。 多くの読者さん同様わたしもテレビドラマを観て原作を読み始めました。 まさかの竹内結子さんが姫川玲子役で…

「項羽と劉邦」の楽しみ(6)沛公

WOWOW 毎週土曜午前9:00(2話ずつ放送) いよいよ劉邦は沛公となりました。 沛県の県令を殺してかってに県令になったのですから、ドラマでも言ってるように「前に進むか、死ぬしかない」運命となったのです。 劉邦はこれから漢の皇帝につくまで(前200年)沛…

映画「ジャッカルの日」職人芸の粋

ひさしぶりに「ジャッカルの日」を観ました、年月を経ても色あせない名作ですね。 今日は、とくにフレッド・ジンネマンのフィルム編集に職人芸の粋をみたような気がしました。 どのシーンもあともう一秒見たいと思うその瞬間にフィルムを切ってつないでいる…

「イル・ディーヴォ ‐魔王と呼ばれた男」

ジュリオ・アンドレオッティ氏死去=イタリア元首相 ジュリオ・アンドレオッティ氏(イタリア元首相)イタリアからの報道によると、6日、心不全のためローマ市内の自宅で死去、94歳。 ローマ生まれ。第2次大戦後、イタリア政界を長期支配した旧キリスト…

映画「キラーエリート」

惜しいアクション映画でした。 まず実話に基づくおそるべき良質な脚本。 キャスティングも最高、名優ばかり(ジェイソン・ステイサム ライヴ・オーウェン ロバート・デ・ニーロ ドミニク・パーセル エイデン・ヤング イヴォンヌ・ストラホフスキー)これ以上…

メルビル「白鯨」という不条理劇

白 鯨 MOBY DICK (冒 険 者 た ち / 因 縁 の 対 決) [DVD](2012/04/04)ウィリアム・ハート、イーサン・ホーク 他商品詳細を見る このブログをスターバックスで書いている。 シアトル生まれのこのコーヒーチェーン店の名前の由来は「白鯨」に登場する一等航…

「スターバックス成功物語」

二日に一度は必ず近くのスターバックスで過ごす。 時間は正確に1時間。 わたしの大切な読書タイムである。 今朝、バリスタの勧めてくれたイスラ(フローレス インドネシア)は 甘く爽やかな森林の空気を喚起させてくれた。 スターバックス成功物語(1998/04)…

オタール・イオセリアーニの最新作「汽車はふたたび故郷へ」

6/5(水)午前4:45 WOWOWシネマで再放送 「ベニスに死す」に触発されて思い出す、もっとも美しくベネチアを描いているのがこの映画「月曜日に乾杯」。 主人公が屋根にのぼりベネチアの街を俯瞰するシーンには息を呑みます。 オタール・イオセリアーニ …

映画「ジャッジ・ドレッド 」バイオレンスの美学

バイオレンスの美学、暴力シーンを美しく見せる、 普通に考えるとおぞましい発想ですがまあ映画での話、よしとしましょう。 はじまりはサム・ペキンパーの「ワイルドバンチ」あたりから、その後はそんな手があったのかと、われもわれもとスローモーションで…

映画「ハンガーゲーム」ジェニファー・ローレンスの快走

アメリカの作家スーザン・コリンズによるヤングアダルト小説(青少年向けのライトノベル)が原作。 近未来のSFファンタジーと気軽に見始めたのだが、 意外やいがい、現代社会を投影したシリアスなドラマに仕上がっていて、時間も忘れて見入ってしまった。 …

自然農法「甘夏のジャム」

それは現代の魔法である。 自然には人間が考えるより複雑で精緻で科学力の及ばない不思議のちからがあるのだろう。 なにげない甘夏のジャムひとつにわたしの舌は確実に反応し、さわやかな快感をあたえてくれる。 届いた甘夏とレシピそのままの作品がこれであ…

映画「アルゴ」

アカデミー賞作品賞、それもオバマ大統領夫人から発表されましたが、それにふさわしい映画でした。 映画を観るまでは、仰々しいパフォーマンスに首を傾げていましたが、映画を観ればなるほど納得しました。 史実はともかく、映画の要素、脚本、俳優、撮影、…

映画「最終目的地」ジェームズ・アイヴォリー

名画、おそらく時を経ても何度も観るであろう映画です。 ジェームズ・アイヴォリー監督による文芸ドラマ、 今回はウルグアイ、鬱蒼と茂るジャングルのなかの館が舞台です。 「眺めのいい部屋」「ハワーズ・エンド」「日の名残り」「上海の伯爵夫人」どの作品…

『金閣寺』三島由紀夫を読む

調べごとがあって、しばらくぶりに三島由紀夫の「金閣寺」を読みました。 いまごろ、なんで?という感じですが。 戦後文学の最高傑作のひとつでしょう。 まるで金閣寺の模型のような、というよりまるでダイヤモンドのような完璧で精緻な傑作小説です。 一言…

「夏目漱石展」を観る 広島県立美術館

楽しみにしていた展覧会(広島県立美術館)でありましたが、所用で忙しく結局最終日に観覧することとなりました。 漱石に関係する絵画や墨蹟の展示となりますと、当然ターナーなどイギリスロマン主義派の絵が中心となります。 とくに倫敦塔の着想のヒントと…

映画「ドライヴ」監督ニコラス・ウィンディング・レフン

世の中は広い。 デンマークのニコラス・ウィンディング・レフン、驚くべき才人である。 「ブリッド」のカーアクションと「シェーン」のドラマ、「パルプフィクション」の感性、 そしてライアン・ゴズリングは「スカーフェイス」のアルパチーノ。 これだけ揃…

競馬「天皇賞」

競馬は「書斎の競馬」ほど楽しみます。 149回天皇賞は大方の予想を外してフェノーメノが勝利しました。 競馬の予想記事ほど反省のない無責任なものはありませんが、一方 それでも競馬担当記者の仕事はジャーナリズムの中できれいで楽しいものでしょう。 …

「スカイフォール」帰ってきたジェームス・ボンド

007の50周年記念映画だそうである。 なるほど「スカイフォール」ダニエル・クレイグのボンドの立ち振る舞いは初代ショーン・コネリーを彷彿とさせる。 処女作「ドクター・ノオ」でボンドが登場してからもう50年にもなるのか。 いま思えばおかしい、人…

よみがえる復刻版レコード

いまだに信じられないのだが、その音を聴くとレコード音がよみがえっている。 わたしは1930年代のSPレコードの復刻LPレコードを幾枚か所有しているが、 名演奏はともかくなんと言ってもザーザーというSP特有の音質の悪さに閉口してあまり聴く気がしな…