「ダラス・バイヤーズクラブ」ジャレッド・レト
ジャレッド・レトのトランスジェンダー「レイヨン」役の演技が観たいと思った映画でしたが、
ほぼ完璧な名画に感動しました。
1.まずは実話に基づく脚本の出来がすばらしい。
物語の主題はエイズ治療薬薬害の告発のはずが、そんな思わせぶりな展開にしていないのです。
まったく馬鹿丸出しの荒くれカウボーイ「ロン」がエイズで、だからどうした、明日死んでも誰も悲しむまいに、
トランスジェンダーの「レイヨン」もどうだっていい女のはずだが、
物語が進むにつれて二人の行く末が気になりだすという不思議な展開。
犬猿の仲のはずの二人が少しずつ距離をつめていく、スーパーで「レイヨン」が「ロン」を見直すシーンがいいですね。
ムチャクチャ悲惨な話を砕いてユーモアとペーソスの味付けで明るいドラマを書いています。
2.マシュー・マコノヒー、ジャレッド・レトの役作りと演技は絶品、アカデミー賞受賞もうなずけます。
ジャレッド・レトの母親を賛辞したアカデミー賞受賞スピーチは有名ですが、過酷な人生を歩んできた母子とさまざまな権益と戦ってきたレトへのアーティストたちの共感のスタンディングオべレーションにはみんなが涙しました。
3.ジャン=マルク・ヴァレ監督の映像づくり
起伏表現を抑えたドキュメンタリータッチの映像、かつ、ところどころに差し込まれたシュールな映像は只者ではない、
「レイヨン」の死の時間に「ロン」が蛾の飛び交う部屋で恍惚となるシーンは圧巻、どう考えたらこんなシーンを思いつくのでしょう。
偶然による奇跡の作品なのか、ジャン=マルク・ヴァレ監督の力量なのか、もう一、二作品期待したいですね。